労務リスクマネジメントの基本

〜 就業規則の整備 〜


1.就業規則の重要性
  
 今国会で「労働契約法案」が審議予定となっており、同要綱には次のように記載されている。
 「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とするものとす
ること。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準によるものとすること。」

 今後は、他社を模倣した形式的な就業規則ではトラブルを助長するだけであり、どうしても自社の現状にマッチ
 した就業規則の整備が不可欠になる。


2.就業規則に定める各項目のポイント

 @  社員の定義と適用範囲
    だれを対象にした就業規則かを明確にする。
    正社員のみか。パートタイム労働者も含むのか。

 A  採用選考時と採用決定後の提出書類
    選考時に提出すべき書類:履歴書、健康診断書、技能証明書、運転記録証明書
    採用決定後に提出すべき書類:誓約書、身元保証書、住民票記載事項証明書

 B  試用期間
  ・ 試用期間中の解雇は14日を超えると解雇予告手続きが必要となる。
  ・ 試用期間中の解雇や本採用にしないときの規定を細かく規定することも望ましい。

 C  服務規律
  ・ 労働者は会社と労働契約を結んだことで、賃金の支払いを受ける代わりに労務を提供するとともに、会社に
    対して、次の義務を負っている。
    職務専念義務(就業時間中は職務だけに従事し、他の活動は行わない)
    企業秩序遵守義(就業時間中は企業施設の内外において企業の正当な利益を侵害してはならない)
    施設管理権に服する義務(企業施設内では使用者の定める施設管理規則に従う)
  ・ 規定する基本項目
     無断での職場離脱の禁止
     会社施設・設備の無断使用の禁止及び物品を大切に扱う義務
     取引先などからの金品の授受の禁止
     会社の名誉・信用を守る義務、個人情報・機密情報の守秘義務
     兼職の禁止
     政治・宗教活動に対する規制
     風紀秩序の維持、セクハラ禁止
     酒気帯び運転や運転中の携帯電話の禁止
     会社に無断での残業禁止

 D  人事異動
  ・ 配置転換・転勤・出向など使用者の人事権やそれに対する従業員の義務について明記すべき。それにより
    包括的に従業員に同意を得たことになる。実際に異動を命じるときは裁量権の乱用にならないように配慮が
    必要である。

 E  休職・復職
  ・ 休職事由を明確にする。
  ・ 適切な休職期間を設定する。
  ・ 復職の条件を設定する。(医師の診断書など)
  ・ 復職できない場合は自然退職の旨の規定

 F  退職・定年・解雇
  ・ 高齢者雇用安定法の改正で65歳までの継続雇用が義務化された。継続雇用義務化対応マニュアル参照

 G  勤務時間
  ・ 週40時間、実態を記載する。
  ・ 始業・就業時刻の繰上げ・繰下げの規定

 H  年次有給休暇
  ・ 上限は20日で従来通りだが、上限に達するまでの期間が10年6か月から6年6か月に短縮された。(3年
    6か月目から2日ずつ増加)
  ・ パートタイマー(週30時間未満で、週4日以下または年216日以下の短時間労働者)にも労働時間や労働
    日数に応じた有給休暇をあたえる。

 I  産前産後の休業
  ・ 産前休業は出産予定日を含んで6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定の者が請求したとき休業さ
    せる。
  ・ 産後休業は出産後8週間は休業させる。6週間を経過した者が請求したとき、医師が認めた業務につかせ
    ることができる。
  ・ 通常無給扱い

 J  育児・介護休業
  ・ 導入義務づけ
  ・ 有給か無給かの明記

 K  賃金
  ・ 賃金の支払い方法は詳細に、昇給・賞与については保留条件をつける。
  ・ 残業見合い分として支給している手当は、その旨を明確に記載しておく。

 L 退職金
  ・ 退職金は法律上とくに支払いが義務づけられているものではないが、退職金制度を設けている会社は必ず
    記載しなければならない。退職金規程で明確にされている場合は、労働基準法の賃金として保護される。
  ・ 適用される者の特定

 M 懲戒
  ・ 罪刑法定主義の原則(法律や就業規則などによる具体的な規定がなければ、使用者は労働者に職場秩序
    を乱す行為があっても、その労働者を懲戒することはできない)
  ・ 解雇以外では必ず「始末書」の提出を義務づける。
      (1) けん責
        始末書をとり、将来を戒める。
      (2) 減給
        始末書をとり、その金額が1回について平均賃金の1日分の半額、総額が一賃金計算期間における
        賃金総額の10分の1の範囲内で減給する。
      (3) 出勤停止
        始末書をとり、7日以内出勤を停止させ、その間の賃金は支給しない。
      (4) 昇給停止
        始末書をとり、次回の昇給を一定期間停止させる。
      (5) 解職
        始末書をとり、その役職を解きます。
      (6) 諭旨退職
        退職願の提出を勧告する。
      (7) 懲戒解雇
        予告期間を設けないで即時解雇し、行政官庁の認定を得た場合は、解雇予告手当を支給しない。
        退職金は支給しないか、または減額する。


3.就業規則を作る前に自社の問題点をチェックしてみよう

  ・ 週40時間を守っているか?
  ・ 就業規則に記載されている労働時間及び休日は、実態と合っているか?
  ・ 就業規則に記載されている労働時間及び休日は、それと同じものが雇用契約書にも記載されているか?
  ・ 週40時間を超えた労働をした時に残業代を支払っているか?
  ・ 残業代が定額式である場合は、実際の残業時間の範囲内におさまっているか?
  ・ 残業代の計算方式は合法的か?
  ・ 出勤簿もしくはタイムカードを使って適切に労働時間を記録しているか?
  ・ 残業をする必要がある場合に36協定を毎年出しているか?
  ・ 1年単位変形労働時間制を採用している場合にカレンダーを毎年提出しているか?
  ・ 有給休暇を合法的に与えているか?
  ・ 従業員(パートも含めて)解雇するときは30日前に予告をするか、30日分の手当を払っているか?
  ・ 従業員を雇用保険に入れているか? 雇用保険は週20時間以上勤務するパートにも加入義務がある。
  ・ 従業員を社会保険に入れているか? 社会保険は正規従業員の所定労働時間の
    3/4以上勤務するパートにも加入義務がある。


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